アグロフォレストリー活動|フィリピン・レイテ島の環境回復と農家支援|HHHJapan

Agroforestry Project

アグロフォレストリー活動

HHHJapanは、フィリピン・レイテ島で台風被害を受けた農村地域を対象に、アグロフォレストリーを通じた環境回復と農家の生活改善に取り組んできました。

この活動は、単なる植林ではありません。ココナッツ農家が、果樹、木材、竹、野菜、根菜類、家畜、有機肥料を組み合わせた持続可能な農業へ転換し、自然環境の回復と生活の自立を同時に目指す取り組みです。

フィリピン・レイテ島で行われたアグロフォレストリー活動の様子

アグロフォレストリーとは

アグロフォレストリーとは、森林や樹木と農業を組み合わせる土地利用の方法です。木を植えるだけでなく、果樹、木材用樹木、竹、野菜、根菜類、家畜、有機肥料などを組み合わせ、農家の暮らしと自然環境を一体的に回復させることを目指します。

レイテ島の農村地域では、多くの農家が長年ココナッツ栽培に依存してきました。しかし、台風でココナッツの木が大きな被害を受けると、収入源を失い、再び収穫できるまで長い年月を待たなければなりません。そのため、ココナッツだけに頼らない多様な農業への転換が重要になります。

目的農村環境の回復と農家の生活改善
対象台風被害を受けたココナッツ農家
方法植林、果樹、野菜、家畜、有機肥料の組み合わせ
特徴環境保全と生活再建を同時に進める活動

事業立案の背景

2013年11月、フィリピンを襲った台風ハイヤンは、レイテ島を中心に甚大な被害をもたらしました。農村地域では、ココナッツの木や熱帯樹木が大規模に破壊され、農家の収入源、森林、水環境、土壌保全に大きな影響が出ました。

ココナッツの木は、新しく植えても実をつけて安定した収入源になるまで長い時間がかかります。その間、農家は別の生活手段を確保する必要があります。そこで、キャッサバ、さつまいも、タロイモ、野菜、バナナ、マンゴー、ジャックフルーツ、ポメロ、カカオ、マホガニー、竹などを組み合わせるアグロフォレストリーが、復興支援の中心的な方法として検討されました。

この考え方は、被災した農家を支援するだけでなく、森林の再生、土壌侵食の防止、淡水供給の回復、将来の災害被害の抑制にもつながるものです。

事業対象地域の地図

初期の事業立案では、フィリピン・レイテ島の対象地域を確認しながら、現地の農村環境、被災状況、農家の生活条件、アグロフォレストリー導入の可能性を整理しました。以下の地図は、レイテ島における主要な事業対象地域を示す資料です。

フィリピン・レイテ島におけるアルブエラの位置を示す地図

アルブエラ市の位置

地球環境基金助成事業の初期資料では、レイテ島北東部から西側地域にかけて、アルブエラ市周辺の高原地域が対象地域として整理されています。台風被害を受けたココナッツ農家の支援とアグロフォレストリーへの転換が検討されました。

フィリピン・レイテ島におけるオルモックの位置を示す地図

オルモック周辺地域

オルモック周辺は、レイテ島西側の重要な地域として、現地調査や協力体制を考える上で参照されたエリアです。アルブエラや周辺農村地域とあわせて、レイテ島での復興支援の地理的背景を理解するために役立ちます。

活動の基本構想

初期の事業構想では、ココナッツ農家をアグロフォレストリーへ転換することで、農家の生活と農村環境を同時に回復することが目標とされました。

具体的には、自給用と販売用の作物、果樹、木材用樹木、竹、ヤギなどを組み合わせます。根菜類や野菜は農家の食料と販売収入を支え、果樹や木材は将来の収入源となり、竹は建築、食用、家具など多様な用途に使えます。

さらに、家畜の糞尿を有機肥料として活用し、根菜類を飼料として利用することで、農地の中で資源が循環する仕組みを作ることが考えられました。

レイテ島の農村地域でのアグロフォレストリー事業対象地の様子

事業の3つの柱

アグロフォレストリー活動は、環境回復、農家の生活改善、地域主体の継続という3つの柱で構成されています。

1. 農村環境の回復

果樹、木材用樹木、竹などの植林により、土壌侵食を抑え、森林の保水力を高め、将来の災害被害を軽減することを目指します。

2. 農家の生活改善

野菜、根菜類、果樹、家畜を組み合わせ、食料自給と販売収入の両方を支えることで、ココナッツだけに依存しない生活基盤を作ります。

3. 地域主体の継続

デモファーム、農民間普及、生産者委員会、一次協同組合を通じて、農家自身が活動を継続できる仕組みを作ります。

ロジックモデルに基づく活動設計

事業立案時には、活動、アウトプット、アウトカム、最終目標を整理したロジックモデルが作成されました。これは、単に苗木を配るだけでなく、どの活動がどの成果につながるのかを明確にするための設計図です。

1

活動

作物適合性評価、ココナッツ農家調査、物資提供、デモファームの同定・訓練、農民間普及、一次協同組合の設立、市場開拓を行います。

2

アウトプット

果実、木材、竹などの植樹、参加農家のアグロフォレストリー間作への転換、デモファーム化、協同組合づくり、販売先開拓を進めます。

3

アウトカム

土壌侵食の減少、淡水供給の増加、農家の自給能力向上、農民間普及による転換拡大、販売体制の発展、農家収入の改善を目指します。

4

最終目標

レイテ島の対象農村地域における自然環境とココナッツ農家の生活を復興し、地域内で持続する農業と販売の仕組みを育てます。

デモファームと農民間普及

この事業の大きな特徴は、デモファームを中心とした農民間普及です。アグロフォレストリーに関心を持つ農家を見つけ、訓練し、その農家の農地を実践例として周辺農家に見てもらうことで、活動を地域内に広げる仕組みです。

農家にとって、外部の専門家から説明を受けるだけでなく、近隣の農家が実際に取り組んでいる様子を見ることは大きな学びになります。デモファームは、技術の普及だけでなく、地域の信頼と参加意欲を高める役割も持っています。

デモファームと農民間普及に関するアグロフォレストリー活動の様子

一次協同組合と販売の仕組み

農家が新しい作物を育てても、販売先がなければ生活改善にはつながりにくくなります。そのため、事業立案の段階から、一次協同組合を作り、農産物の販売先を開拓することが重要な要素として位置づけられました。

生産者委員会や協同組合を通じて、農家が共同で販売活動を行い、有機農産物や加工品の市場につなげていくことが目指されました。将来的には、サツマイモチップス、キャッサバ粉、タロイモチップスなどの加工・販売も視野に入れた構想です。

農産物の販売や地域組織づくりにつながるアグロフォレストリー活動

専門的な指導と協力体制

HHHJapanのアグロフォレストリー活動は、HHHJapan、現地実施団体であるWAND財団、日本側の専門家、現地側の専門家が連携しながら進めてきた事業です。日本側では事業の立案や専門的な方向性を、現地側では地域に根ざした実践と指導を重視し、活動を継続してきました。

雨河祐一郎先生(Yuichiro Amekawa)

事業立案・専門的指導・助言

事業の立案や活動の方向性については、立命館大学の雨河祐一郎先生(Yuichiro Amekawa)に専門的な指導と助言をいただきました。雨河先生は、有機農業、複合農業、アグロフォレストリーなどを含む持続的農業が、小規模農家の暮らしや環境保全に果たす役割について研究されています。

エルメール博士(Dr. Elmer)

現地実施・地域指導・専門的協力

現地での実施と地域に根ざした活動の推進にあたっては、WAND財団のエルメール博士(Dr. Elmer)にも専門的な協力をいただきました。現地の農家、地域組織、農村コミュニティとの関係づくりを通じて、アグロフォレストリーの考え方を実際の地域活動へつなげていくうえで重要な役割を担っていただきました。

HHHJapanは、こうした専門的な知見と現地での実践を組み合わせながら、フィリピン・レイテ州の農村地域における生活再建、農業の多様化、地域環境の回復に取り組みました。

3つの助成事業としての展開

HHHJapanのアグロフォレストリー活動は、複数の助成事業を通じて段階的に発展してきました。それぞれの助成事業では、対象地域、活動内容、時期は異なりますが、共通する目的は、台風被害を受けた農村地域の環境回復と農家の生活改善です。

地球環境基金助成事業によるアグロフォレストリー活動
地球環境基金

地球環境基金助成事業

アルブエラ周辺での農家調査、植林、デモファーム、家庭菜園、WACCAへの引き継ぎなどを通じて、地域主体の継続を目指しました。

地球環境基金助成事業のページへ

トヨタ環境助成プログラムによるアグロフォレストリー活動
トヨタ環境助成

トヨタ環境助成プロジェクト

タナウアン周辺で、農家調査、植栽、デモファーム、気候変動セミナー、地域組織強化、コロナ禍での継続支援を行いました。

トヨタ環境助成プロジェクトのページへ

三井物産環境基金によるアグロフォレストリー活動
三井物産環境基金

三井物産環境基金助成事業

パロ周辺で、苗木配布、野菜栽培、養鶏支援、小規模研修、青少年環境教育、野菜販売などを行いました。

三井物産環境基金助成事業のページへ

活動写真

以下は、レイテ島で行われたアグロフォレストリー活動、現地調査、苗木配布、研修、農家支援、地域組織づくりの様子です。

レイテ島での農家研修とアグロフォレストリー活動
農家研修と地域での話し合い
アグロフォレストリー活動で使用された苗木
苗木と植栽準備
アグロフォレストリー活動による野菜栽培
野菜栽培と食料支援
農家の生活多様化を支える養鶏支援
養鶏と生活多様化

アグロフォレストリー活動の意義

この活動の意義は、被災地に木を植えることだけではありません。農家が自分たちの土地で、食料を作り、販売できる作物を育て、家畜や有機肥料を活用し、地域で学び合いながら、将来の災害や気候変動に備える力を高めることにあります。

また、日本の若者や支援者にとっても、フィリピンの農村地域で起きている環境問題、気候変動、災害復興、国際協力を学ぶ機会となりました。アグロフォレストリー活動は、現地支援であると同時に、環境教育と国際理解の活動でもあります。

関連ページ

各助成事業の詳細な活動報告は、以下のページからご覧いただけます。